⒈ 白緑の吐息

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少しずつ日が傾いてくる頃 人の波を抜け目的地を目指す。 晴れ渡る夏のコンクリートジャングルは、とてもじゃないが暑い。 おそろいのTシャツを着た女の子たちが、駆け足で追い抜いていく。 Tシャツにパンツかミニ丈のスカート、小さなポシェットにスニーカー。 素晴らしいライブ参戦ファッションだ。 〝足ふとい…〟や〝胸でか…〟など下世話な事を考えながら、彼女たちと同じ方向に足を進める。 〝圭の足長いし…〟〝圭の腰抱きやすい…〟〝胸…もみてぇ〟欲望にまみれている。 ライブ会場に近づくと、長蛇の列が見えてくる。 スタッフさんの指示に従ってお行儀よく並んでいる。 「充哉くーん!」 大きな胸をたわわに揺らせながらピョコピョコと飛び跳ね手を振っている。 「…悪くない。」 笑顔で手を振り返しながら心の声が飛び出た。小さい声が喧騒にかき消されたのが幸いした。 「ごめん、遅くなっちゃったね。」 ギリギリまで家でいたので、遅くなっちゃった訳ではない。 軽く食べてから行かない?と誘われていたが、用事があってギリギリになるかな~、と嘘を伝えていた。圭が「そこは嫌だ。妬いちゃう。」と言っていたのでライブ終演後もすぐ帰る。 「大丈夫だよ。」 ミニスカート、Tシャツ、黒のニーハイソックスにスニーカー。 〝良い。〟 体のラインに沿ったTシャツが胸の大きさを強調させる。 巨乳好きというわけではないが、男としてやはり見てしまう。 「あれ、グッズの着てないんだね。オーバーTかわいいのに。」 「ロッカーに入れてるよ。今回のデザインかわいいもんね。」 黒地に狂暴そうなポメラニアンがガオーっとしてるフロントデザイン。 誰のデザインなんだろうか。 癖のある可愛さ。
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