op. 薄い桃色

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いつもはブレンドコーヒーのグランデサイズをテイクアウトする彼女が、今日のオーダーは少し変わっていた。 ブレンドコーヒーのショートサイズ2個 BLTサンドが2個 イートイン 「お席までお持ちしますね。」 会計後、彼女は隅の方の席に座った。 「待ち合わせかな?」 心の声が小さく漏れた。義弟は聞き逃さず 「男じゃね?」 とコーヒーを入れながら茶々を入れる。 充哉は表情を一切崩すことなく義弟のつま先を力の限り踏みつけた。 「いっ⋯!!」 静かな店内に響き渡る断末魔。 「どしたー?」 店長が奥から顔を覗かす。カウンター内でうずくまる義弟はちょうど死角になっており、店長からは見えない。 「何でもないでーす。お騒がせしました。」 充哉が笑顔で謝罪している。 「お客さん少ないからって、じゃれ合わないでねー。」 とゆるく指摘し、店長はすぐに事務室に引っ込んだ。 「⋯ミツ、覚えてろよ。」 涙を浮かべて義兄の充哉を睨め付ける。 柴崎基(しばさきはじめ) 親の再婚により充哉と兄弟になった。同い年ではあるが、誕生日が充哉の方が早いので自分が弟となっている。 幼い頃から活発で体を動かすことを好んでいる。今でも友人たちとフットサルやバスケを楽しんでおり、ご近所さんからも「元気ねぇ」と評判が良い。 バカ騒ぎを楽しんでいるが、思慮深さも兼ね備えており充哉の暴走を一番心配している。 充哉と身長差は大差ないが、外遊びを好む分肌は小麦色だ。 外面完璧な偽装天使・充哉と反して、裏表のない竹を割ったような気持ちのいい性格をしている。そんな充哉ともなぜか気が合い仲良くつるんでいて、同じ大学に入り(基は相当頑張った)、バイト先も同じだ。
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