⒈ 白緑の吐息

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関係を深める二択は必ず圭に判断をゆだねる。 拒否されたところで止める気はないのだが。 「…充哉」 恥ずかしそうにポツリとつぶやいた。 〝かわいすぎる…〟熱くなるものを感じながらグッと堪える。 「充哉に何して欲しいの?」 可愛すぎるのでもっともっと意地悪をしたくなる。 「…」 「……」 「…………いじわる。」 そういうと充哉の首に手をまわし、軽く口づける。 〝かわいい…泣かしたい…〟 圭の身体に体重をかけて、唇に噛みつく。 深くなる口づけに、充哉の肩を押し返す。 充哉は楽しくなって、圭の両腕を頭の上に挙げさせ片手で拘束する。 そして、もう片方の手で胸や腰をやわやわと擦る。 ガタン…と何かが落ちる音がして、そちらに顔を向ける。 ジーンズに淡いブルーの半袖シャツを着た、さわやかそうな男性が真っ青な顔で立っていた。買い物袋が足元に落ちていたので、その音だろう。 「…誰?」 圭の腕を開放し身体を起こし口元の唾液を拭きつつ、その男性にむけ声をかける。 オートロックのこの家に勝手に入って来られるとは、いったい何者か。 せっかくの圭とのとろけるような甘い時間を邪魔しやがって…。 怒りを込めた低い声で「誰?」ともう一度聞き返す。 「…きょん。」 圭が慌てて身体を起こす。 充哉は圭の乱れた服を直し、蕩けきった顔を隠すように抱きしめ「誰?」と優しく聞く。 「マネージャー」 clownのマネージャー緒方京(おがたきょう)。 通称『きょん』『きょん吉』 生活力皆無の圭の食事の世話をしている。食材を買ってきたり、作り置きを用意したり、傷んだものを処分したり、実家の母親ような役目を担っている。圭は過去に空腹と脱水で倒れていたこともあり、事務所のマネージャーは代々合い鍵を持たされている。また、圭が倒れたのは、京が担当するより前の話しになる。 そして、並々ならぬ恋心を秘めている。
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