293人が本棚に入れています
本棚に追加
時間の合う日は、圭の自宅で会うことが多い。
暑いのも寒いのも好きではない。
インドア派と聞けば格好がいいが、ただの出不精だ。
充哉としては圭とゆっくりイチャイチャできるので有難い。
圭が仕事をている間は、食事の用意をしたり、課題をしたりして時間をつぶす。
充哉は父ひとり子一人の父子家庭だった。
幼い頃に死別し、母の顔も覚えていない。
父は仕事で帰りが遅くなる日も多く、家のことは充哉がやっていた。
食事を作ってみると「美味しい」と褒めてくれ、掃除洗濯をすると「偉いな」と褒めてくれる。テストで100点をとると「お前は賢いな」と褒めてくれる。
父はとても優しい。
思い返せば、父に怒られた記憶がない。
負担をかけまいと怒られない努力もしてきた。
そんな父が基の母に出会ったのが、充哉が中学生の頃。とんとん拍子に話が進み、充哉と基が高校進学と同時に入籍した。
知らない人との共同生活には戸惑いがあったが、なぜか基とは気が合った。そして、自分の妙な性癖もばれた。
充哉は時間を持て余し、いつの間にか眠っていた。
〝 このクッションはダメだ〟
包み込んでくれる程よい柔らかさは、眠りにいざなう。クーラーの効いた心地よい部屋、隣にはあたたかい柔らかい・・・・・・
「・・・圭?」
目が覚めると圭が腕の中でスヤスヤと寝息を立てているではないか。
〝・・・ かわいい〟
頬をふにふにとつつくと「ん~」と眉間に皺を寄せて、ゆっくりとまぶたが持ち上がる。
「おはよ。」
眉間のシワをのばすように唇を押し当てる。
「あんまり可愛い事されると、俺の理性がもたないよ。泣かされたいの?」
優しく甘い声が、最後の一言だけは暗かった。
「・・・泣かすの?」
「うん。酷いことする。」
「・・・・・・ひどいこと?」
「痛めつける。」
充哉の手がいやらしく圭の服の中に侵入する。
下着のホックに手が届いたとき、ソファーに投げ捨てられていた圭のスマホがけたたましく、鳴り響いた。
最初のコメントを投稿しよう!