op. 薄い桃色

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充哉の想い人  忍成圭(おしなりけい)   clown(クラウン) という、5人組ロックバンドのギタリスト。 アイドルグループや海外アーティストにも楽曲提供しており、コンポーザーとしても地位を確立している。 性格はと言えば、いかにもアーティスティックな性分をしている。興味のないことには一切見向きもせず、気に食わないことははっきりと気に入らないと言い、嫌いな人とは目を合わさない。わがままや頑固、自己中心的、自分勝手とよく言われる。生活力はほぼ皆無で、楽曲制作に集中すると寝食を忘れてしまうほど。 そんな唯我独尊な彼女だが、多分にぬけている。スイッチがオフになっているとぽやっとしており、他人の庇護欲を掻き立てるところがある。 充哉は彼女がミュージシャンだとは露ほども知らず、完璧なまでの一目惚れだ。テレビで流れている流行りの音楽はさわり程度は知っているが、推しのアイドルやグループがいるわけではない。 「かわいくない?!」 基の肩をつかみ力いっぱい力説している。 「うんうん。そーですね。」 「やばい!かわいい!!まじでお土産買ってきてくれるのかな?どうしよう、かわいい!!!」 「うんうん。」 「圭さんマジでかわいい。」 「うん?」 「ショートヘアのおねえさんが呼んでたじゃん!」 「へー。」 「圭さん圭さん…かわいい!!!」 「うん。分かった。働こう!」 興奮冷めやらぬ充哉を店内に押し込みながら基は考えていた。 ”どこかで見たことがある気がする。” 町のどこかで会ったとか、どこかの店の店員さんとかではなく、どこのだれかは存じ上げませんが、確実に知っている顔なのだ。 ”まあ、いいか。そのうち思い出すだろう。” 基は記憶を掘り起こすことをとりあえず止めた。 今はバイトの時間だ。給金分は働かなくてはならない。
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