op. 薄い桃色

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恋の力は偉大なのか、いつも以上に機嫌がよく充哉の王子様スマイルがさく裂している。食事もドリンクももちろん味に定評はあるが、充哉に会いたい話をしたいと来店してくる女子学生も多々いる。充哉も手が空いていればだが、話しかけられると相手をするし、女子高生に勉強を教えてほしいと頼まれればアドバイスをしたりもする。 もちろん、バレンタインにもらうチョコの数は言うに足らず、毎年家族総出で消費している。充哉自身は「無理に食べきらなくても捨てればいい。」と言っており両親や基に大バッシングを受けているが当の本人は「とりあえずは貰わないと悪いだろ。おいしく食べるとか言ってないし。」と悪びれる素振りが微塵もない。毎年その時期になると父親は「俺の教育がよくなかったんだ…」とチョコレートが消費されるまで落ち込みを見せる。柴崎家の年中行事だ。 店内が少し落ち着いたころ、テーブルを拭いて回っていた基に女子高生が話しかける。 「基くん。」 彼女もまた充哉のファンである。 「ん~?」 基が彼女のテーブルに近づくと、控えめに顔を寄せて囁くように問いかける。 「充哉くんどうしたの?今日すごくご機嫌さんだね。」 基は苦笑いを浮かべて頭を掻く。 “片思い中のおねえさんと会話したからじゃね?” とは言えず。 「あー、そうか?今日の夕飯が好きなもんなんだろ。」 適当なことを言って言葉を濁す。 「ふーん。彼女でもできたのかと思った。」 おんなの勘は鋭い。高校生と思ってなめてかかると火傷をする。 「はぁーー。彼女欲しい。」 「基くんだってモテるでしょ?」 何言ってんのよ謙遜しちゃって、とふざけて言われる。 「基くんはスポーツマンっぽいイケメンだよね。」 「わかるー。充哉くんはアイドル系イケメン。」 「基くんは謙虚すぎなんだよ。」 「もっと自信もって。」
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