op. 薄い桃色

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基だって自分の顔が悪いとは思っていない。どちらかといえばイケメン寄りだと自負している。運動もできて、背も高くて、人当りもいい。充哉ほど節操なしではないが、まずまずモテるほうだ。 そう。 彼もまたかなりのポジティブシンキングの持ち主だ。 "お前らにそんなこと言われる筋合いはない。黙ってろ小娘ども。” と、腹の奥底の方で思っていた。 バイトが終わり更衣室で着替えをして帰る準備をしていると、充哉が大きな大きなため息をついた。肺に入っているものが全部出てしまったのではないかと思うくらい、深い深いため息だった。 「はあぁぁ~~~。」 「お前のテンションの落差激しいな。大丈夫か?そのうち心不全おこすんじゃねーか?」 「死ぬなら腹上死したい。」 「キッモ!!」 「圭さんの腕の中で死にたい…。」 「いやいや、ごめん、まじキモいって。」 充哉は至って真面目に言っているのだが、基といえば引きすぎて鳥肌が立ったのか自身の体を抱きしめている。 充哉が真剣に恋していることは理解しているが、言動が多々気持ち悪い。きれいな顔が台無しだと思う。 「1週間だぞ?今まで2~3日に1回は会えてたのに、1週間って。まるまる1週間なんて、悲しすぎる。この1週間生きていけるのか?悲しくて死んじゃう。泣きすぎて脱水起こして死んじゃう。」 独り言なのか話しかけているのか分からないくらいの声のボリュームでぶつぶつと言い続けている。 「うぜー。お土産あるんだろ?」 その言葉でぱっと顔を上げ光を取り戻した。 「そうなんだよ。ということはアレだろ。きっかけだろ。距離を縮めるチャンスだよな!?」 明るくなったのもつかの間、すぐにうな垂れ「1週間…」と落ち込み始める。 テンションの急上昇急降下。 「なあ、ミツ。お前それ疲れねーの?」 .
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