op. 薄い桃色

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op. 薄い桃色

いつもよりは少なく、時々よりは多い。 時間も決まっていない。 頼むものは毎回おなじで、テイクアウト。 ジーンズにTシャツ、ラフな格好。 金髪だったりピンクになったり、ころころと変わる髪の色。 香るタバコの匂い。 黒縁の眼鏡。 薄化粧。 長いまつげ。 清潔に切りそろえられた爪。 凛とまっすぐな背中。 無愛想。 でも「ありがとう」は言ってくれる。 なぜか絶対に、目は合わない。 名前も知らない。 何の仕事をしているのか知らない。 年齢も知らない。 時々、イヤホンで何かを聞いている。 その顔がとても綺麗だと感じる。 何を聞いているのだろうか。 音楽? ラジオ? 何が貴方を湧きたてる? 何でこれほどまでに惹かれるのか。 何でキラキラして見えるのか。
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