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「あ、震えてる? 寒いよね、これ使って」
美弥は自分の着ていたカーディガンを畳んで俺の前に置くと、カーディガンと俺が濡れないように挿していた傘を地面に置いた。
(変なやつ。自分が濡れるじゃん)
美弥は「これでよし」と満足気に笑みを浮かべると鞄から食パンを一枚取り出して、カーディガンの上にそっと置いた。
「ごめんね、本当は猫缶とかの方が身体に良いし美味しいんだろうけど……あんまりお金がなくて」
美弥は眉を下げると俺を見てにこりと笑った。
「私、美弥っていうの。この公園の近くのコンビニでバイトし始めたの。あなたはずっとこの公園に?」
(違うよ! 俺もさっき来たとこだし)
俺は苛立ったように一声なくと、あっちへいけとばかりに美弥の置いてくれたパンから視線をそらした。
「あ! 私が居たら食べづらいよね。ごめんね」
そう言うと美弥は俺から少し離れて背を向けた。
俺は再びパンを見つめる。正直、この1週間ほとんどろくなものを食べていない俺は目の前の綺麗なパンに釘付けだ。
(毒……入ってないよな?)
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