10012人が本棚に入れています
本棚に追加
俺はその日、公園のベンチの下で震えていた。
いつもはここから少し離れた川辺で生活していたのだけれど今日はひどい雨だったから。時折鳴り響く雷がすごく怖くて、俺は気づけばこの公園のベンチの下で丸くなっていた。
(……雷、おさまったかな)
俺はベンチの下からそっと顔を出した。雷は止んだみたいだが、雨はしとしととまだ降っている。
「……大丈夫? おいでおいで」
俺はふいに聞こえてきたその声に耳をピンと立てた。見れば、傘を刺した人間の女が俺を見ながら手招きしている。
(うざいな)
そう。俺の美弥に対する第一印象だった。
(話しかけてんじゃねぇよ、どっかいけよ)
だってさ、人間なんて所詮偽善者しかいないって思ってたから。
俺を見て可愛いと寄ってきても別に一生面倒を見てくれるわけじゃない。人間たちは俺ら野良猫をちょっと撫でたら満足してその存在を忘れていく。当然、もう二度と会うことはない。
──人間は薄情者で信用できない生き物。
それが俺が母ちゃんと兄ちゃんと暮らした中で学んだことだ。
人間なんてろくでもない。
信用なんかするもんか。
「雷怖かったよね。雨、早く止むといいんだけど」
俺は美弥の声が聞こえていながらプイッと顔を背けて無視をした。
最初のコメントを投稿しよう!