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※※
次の日、23時5分前──。
もう美弥は来ないと思いつつも俺はなぜだが、元いた寝床の河原に帰る気になれず、公園に留まっていた。
(もうちょっとで23時か……)
公園の真ん中に立っている背の高い時計の針はもうすぐ『11』を指そうとしている。
俺はもし今日美弥が来たら返そうと、カーディガンの端を口元に加えて小さく畳んだ。
さすがに傘は俺じゃ畳めたないから俺は傘の前に座ると、暗闇に向かってキョロキョロと目を凝らす。
(きっと来ない)
(来るわけない)
(もう忘れてる)
そう思っているのに、俺は朝から美弥のことばかり考えていた。
目が大きくて黒髪で小柄で笑った顔は、今まで見てきた人間のなかで一番濁りのない綺麗な笑顔だった。
(あ……)
時計の針が23時ちょうどを指し示す。
耳を澄ますが公園はガランとしていて人の気配はない。
(ほらな)
(所詮、人間なんて……)
──その時だった。
スニーカーを鳴らす音と一緒に知ってる声が聞こえてくる。
「ミャー? 猫ちゃんいるかな? ミャー?」
(えっ! ミャー、って……なんで……)
俺はすぐに傘の下から顔だけ出した。
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