9人が本棚に入れています
本棚に追加
/88ページ
『何も出来ない時は寝るしかない』
しばらく経って、俺は薄っすらと目を開けた。瞼は上がっているはずなのに、まだ暗い。
「夜か?」
どうも、夜中に目を覚ましたらしい。上手くしたものだ。こっそり床下から這い出すにはちょうど良い時間と言えた。俺は、コソ泥時代のカンが戻ってきたのかな、と思い良い気分になり、起き上ろうとしたのだが身体が動かない。
手も足も動かず、辛うじてちょっと首が動かせる程度だった。俺は少しの間混乱したが、すぐに現状を把握する。どうも身体の上に、何かのっかっているらしい。寝ている間に地震か何かで家が崩れたのだ、と判断した。
家の縁の下に居たことは運が悪いが、こんな状態でも生きているのは運が良い。
「おーい! 誰かー!」
俺は、あらん限りの声を振り絞り叫んだ。とにかくここにいることを誰かに知らせなければならない。幸い骨が折れたり大怪我はしてないようだが、このままだと餓死してしまうだろう。
「誰かー! 助けてくれー!」
何度か大声で叫んだが、何の反応もない。
まずいな、これは。
俺は段々不安になってきた。今、町がどういう状態なのかわからないが、耳をすませてみても、ガレキを撤去したり行方不明者を捜索したりしている気配もない。
思ったよりも地震の規模がひどくて、近隣で生きているのが俺だけの状態たったとしたら、このまま誰にも見つからずに死んでしまう可能性が高い。俺は今は叫んでも無駄だと思い、目を瞑った。どうせ何も出来ないのだから寝てやろうと思ったのだ。
自分で決めておいてなんだが、こんな状態で眠れるのだろうか?
……と思っていたが、疲れていたのかいつしか俺は闇に引かれるように意識を失っていた。
最初のコメントを投稿しよう!