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ある日、世界で異変が起こった。空から付箋が落ちてくるようになったのだ。しかし偉い政治家も科学者も皆揃ってこの現象の意味を解き明かせずに首をかしげるばかりで、ひらひらと落ちてくる付箋がどこから来たものか、何の目的があるのか誰にも分からなかった。
皆、付箋の存在の不可思議さに怯えて触ろうとはせず、うっかり付箋にあたってしまうことを恐れて外では傘をさすことが一般的になった。また、謎の付箋をまとめて保管所に運ぶ高自給のアルバイトの募集がかけられるようになっていった。
ところが、日本で付箋を片付けていた1人の男性が誤って付箋に触れた時、状況は一変した。
『本棚の3段目の奥に落ちてるよ』
男性が触れた付箋からはこのような文字がにじみ出てきたのだという。このことを知った学者は報酬と引き換えに、複数人に付箋を触ってもらう実験を行った。結果、付箋は触れた人の悩みを解決したり、背中を押したりするような言葉が浮かび上がるようにできていると判明した。実際に、初めて付箋に触れた者はバスの定期を紛失して悩んでおり、文字通りの場所を調べたところ本当に自宅の本棚の3段目の奥で探し物を見つけたそうだ。
これが公式に世界で発表されてからというもの、人々は傘をさすのをやめて、付箋が目の前に落ちてきたら手に取るようになっていった。ある人は恋人に送るプレゼントのヒントを、ある人は仕事を辞めるために勇気をもらい、いつしか人々は空から降ってくる付箋という不思議な存在を受け入れて、日常風景として認識していた。
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