第3章 10◇憧れのライブ

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 これで終わってしまうのだと思っていたところで、会場内に桃の花びらが舞い、HARUとHIROにスポットが当たり、流れるようなギターのデュエットが耳に届く。  桃華は流れ始めたしっとりとした前奏部分に思わず頬を緩ませた。  『桃色恋華』だ。  やがてステージの中心でスタンドマイクを持つTAKUにスポットが当たる。 「聖なるクリスマスの夜。愛するあなたにこの歌を捧げます」  TAKUの声にワアアアアーと黄色い歓声がわき起こる。  瞬間、全体にライトが当てられ、桃色恋華のどことなく切なく甘い音色と歌声が響いた。  TAKUは時折、桃華の居る方を見つめながら力強く歌い上げているようだった。  あの日あの瞬間から  あなたに確かに惹かれていた  明るい笑顔 可愛らしく照れる顔  ふとした拍子に見せる切ない影  あなたを知れば知るほどに深みにはまっていった  ひとりじゃ抱えきれない想い  小さなカラダに抱え込み  身動き取れないあなたを 未来に連れていきたい
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