第3章 10◇憧れのライブ

15/18
前へ
/194ページ
次へ
 ペンライトがゆらゆら左右に揺れる光景を見ながら、自らもペンライトを動かしながら、桃華は拓人と出会った日のことを思い返していた。  NEVERのTAKUとして活躍する拓人とは、桃華がボランティア団体に無理を言って会わせてもらったのだ。  拓人が連れていきたいと言ってくれた未来を今桃華が過ごしていると思うと、感慨深さに鼻がツンとした。  出会えたこと、恋人同士になれたこと、移植手術を受けて今を過ごせていること、それらは全然当たり前なんかじゃないのだと身に染みて感じた。  同じ空の下 同じ空気を吸うあなたに エールを唄おう   俺はあなたの運命を全て受け止めたい  ずっとあなたの味方だから そばにいてほしい  会えない間、ずっとこの曲から言葉どおりエールをもらっていた。  願掛けだなんて言って拓人と別れたことを後悔しなかったといえば嘘になる。  会いたくて、会えなくて、涙を流した夜はたくさんあった。  けれどそれでも拓人には歌っていてほしかった。  NEVERのTAKUとして歌い続けてもらうための足枷にはなりたくなかった。
/194ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加