第3章 10◇憧れのライブ

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 会えなかった日々はつらかったが、同時にまた絶対に会いたいという原動力が今を作ったのだと、あとになってわかった。  残酷な現実の渦に巻かれる  強く咲く儚い花を愛してる  俺はいつまでもあなたを強く想うよ  桃色の風が吹き抜けるなか  何度でも伝えよう  桃色恋華  大勢のファンの前で告白されているみたいで、桃華の胸はくすぐったくなった。  同時に全て聴き終わったときには、桃華の頬に堪えきれなくなった涙が伝っていた。  悲しい涙なんかじゃない、嬉しい幸せな涙だ。  花道を歩いてきた拓人が、桃華の方にも手を振った。  こんなのただのうぬぼれかもしれないけれど、何となく桃華の方を見てくれていたような気がした。  今を生きているだけじゃなく今も拓人に変わらぬ愛を与えてもらえている。自分がどれだけ恵まれて、今を生きていられるのか、幸せを感じられるのかということを思うと、さらに涙があふれた。  TAKUの綺麗な歌声の余韻とともに、黄色い歓声が再びわき起こる。  ファンのみんなが振りかざすペンライトが、流れ星のようだった。
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