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ライブ会場からは、拓人の運転する車で帰る。桃華が見に来てくれたことから、送って帰ることを想定して近くに車を置いていたのだ。
まだ身体は、ライブでの興奮の余韻が残る。
程よいスピードで木々に燈された明かりが流れていく中、拓人はライブでの疲れひとつ見せずに、桃華に優しく声をかけた。
「今日のライブは楽しめた?」
「う、うん」
どことなく言葉をつまらせて、桃華はうつむいてしまった。
ライブが終わってから何となく桃華はよそよそしい。
もしかして、どこか具合が悪いのだろうか。
「どうしたんだよ。まさかどこか調子悪い?」
「そ、そんなことない! すごく楽しくて幸せで、まだ夢を見ているみたい」
「それなら良かった」
拓人は桃華の返事に安心したように笑った。
車が赤信号で停まったとき、拓人は桃華の姿を見て驚いたように目を開いた。何となく桃華がいつになく緊張しているように見えたからだ。
いつもよりも赤く染まる頬に手を伸ばしてみると、桃華はピクリと身を震わせる。
「桃華、緊張してるの?」
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