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「何言ってんだよ。そんなわけねえだろ? 桃華が作ってくれた、それだけで世界一だ」
拓人はうつむく桃華の顔をそっと上げて、甘い笑みを見せる。
「拓人、ありがとう」
「好きだよ、桃華」
「私も、好き」
どちらからともなく唇を重ねて、強く抱き合う。
誰にも邪魔されることのない車内で、何度もキスをした。
少し深いキスを交わしたあと、桃華の身体をそっと離す。
静かな車内で、拓人の胸元に顔を埋める桃華の頭を優しく撫でた。
「遅くなっちゃったな。今夜は疲れただろうから、ゆっくり寝ろよ」
「え……っ」
ゆっくり桃華を離し、拓人は優しく微笑みかける。
本当ならもう少し一緒にいたかったけれど、もう帰さなければならない時間だ。
車庫に拓人が車を停めた音は家の中にも聞こえているだろうから、いつまでもここにいると桃華の両親に不自然に思われてしまうかもしれない。
けれど車から降りようとしたところで、拓人のシャツの裾をつかんだ桃華によって引き留められた。
「私、まだ……一緒にいたい」
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