第3章 11◆聖なる夜のときめき

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 拓人は年末年始は忙しいから、次ゆっくり会えるのは年明けだろう。今日だって久しぶりに会えたのに、話せたのはほんの少しの時間だ。  桃華の気持ちはわかる。拓人だって同じ気持ちなのだから。 「でも、桃華のお父さんもお母さんも心配するだろ?」  何とか桃華を説得しようと試みるが、桃華はつらそうに視線を下にそらしたまま動く素振りを見せない。 「もーもーかっ?」 「……今夜、拓人の家、泊まってもいい?」  ようやく桃華の口から飛び出した言葉に思わず耳を疑った。 「え……?」 「……やっぱり、ダメ?」  ねだるように上目遣いで見つめられて思わず胸が強く脈打ち、桃華を帰らせようという拓人の意思は大きく揺らいだ。 「いや、俺は構わねえけど、桃華の両親が何て言うか……」  連れて帰れるなら、このまま桃華を連れて帰りたい。  拓人自身、桃華の両親から信頼してもらえていることは感じている。けれど成人しているとはいえ、さすがに男性の家に泊まるとなると話は別だろう。  さすがに恋人としての付き合いを認めてもらえているとはいえ、反対されるに違いない。
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