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桃華がシートベルトを装着するのを確認し、拓人はゆっくり車を出発させる。
「空調大丈夫か? 寒かったらすぐ言えよ」
「うん」
「この車、埃っぽくないか?」
「うん」
「身体しんどくなってない? 大丈夫?」
拓人としては桃華を乗せるまでに万全な状態に調えていたつもりだったが、思わず口々に質問をしてしまう。
これらの質問は全て桃華の身体を気遣うばかりに出てしまうのだが、桃華は少し困ったように笑った。
「今の時点で何も気になることはないから大丈夫だよ。もう、拓人は心配し過ぎだよ」
「あ、ごめん……」
「体調おかしくなったらすぐ言うって、私、いつも言ってるじゃない」
口調から、桃華を怒らせてしまっただろうか。
桃華が病人のように扱われることを好まないことも知っていたはずなのに、拓人はやってしまったと苦い表情を浮かべた。
彼女、白石桃華は、幼い頃より心臓に病気を抱えていた。
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