第1章 1◆変わらない気持ち

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 治療中、ボランティアを通して、大ファンだった人気バンドNEVER(ネバー)のボーカルTAKU(タク)こと杉本(すぎもと)拓人と会うことを望んだ桃華の願いを叶える形で知り合った。  一度限りのボランティアで終わるはずのところが、拓人が桃華を気にかけるようになり、連絡を取り合い顔を合わせるうちに恋愛関係に発展した。  心臓移植手術までの繋ぎで補助人工心臓を入れたとき思うような体調の回復が見えなかった桃華には、一度は別れを告げられた。  桃華が無事に移植手術を受けて元気になって拓人のそばに戻るための願掛けだと伝えられ、拓人も桃華の願掛けに協力する形で別れを選んだ。  あのときの選択が本当に正しかったのかと、桃華と会えなかった空白の時間、全く悩まなかったといえば嘘になる。  桃華を信じていても、不安に涙を流した日もあれば、無償に会いたくてたまらなくて苦しくなる日もあった。  出口の見えない時間だったが、三年の時を経て治療に成功した桃華はこの春再び拓人の元へ帰ってきた。  三年経ってもお互いに気持ちが変わっていなかった二人は、再会して間もなく再び恋人同士に戻った。
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