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「はぁ」
取り残されてるみたいだ。何に、だろう。ぼんやりとした柔い思考を抱えながら、朝の光を通し始めた薄暗い部屋の中で私は天を仰いだ。ギシ、と軋むゲーミングチェアとヘッドフォンから流れるゲームのBGMだけがこの部屋の音となって私を包む。目を閉じ、その音たちに身を傾けて少しずつ思考を整えていけば、さっきまで柔く緩やかだった思考も、徐々に形を整え始めてくる。こうして外の音を遮断している時は心が休まるから、いつまでもゲームを終わらせずにBGMだけをひたすらに聴いてしまう。ゲームの世界から抜け出せないまま数時間物思いに耽けることも少なくはなかった。とはいえ、何に取り残されているのか、なんて漠然とした悩みが解決する訳もなく、渋々、さっきまでしていたゲーム配信の感想を見ながらヘッドフォンを取り外した。
途端に外から聞こえてくるカラスの鳴き声が嫌でも私に朝を知らせてくれる。何度目かの溜め息が部屋に浮かんだ。
そして、溜め息を浮かせてふと思った。私が取り残されているということは世界が浮いているのでは、と。一見メルヘンチックに思えるがこれは私的には言い得て妙で、世界が浮いてしまっているから私が取り残されているように思うのではないだろうか。とうに切った配信画面を見つめながら、その眩しさに目を細めた。いつだって画面の向こうは明るいから。私はそれにしがみつくので精一杯だ。しがみついて、離れられない。その結果が長年の不登校による引きこもりじゃあ笑えないが、もうここ以外に居場所を作るつもりはなかった。目を細めてしまうほどの眩しい場所、ここが私の居場所なんだ。
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