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遮光カーテンの隙間から、意地でも入り込んでくる、また違った眩しさの朝日。そんな図々しい朝日は、同年代の高校生たちの登校時間までもを引き連れて部屋へ入り込んでくる。賑やかな声、明るい挨拶。ヘッドフォンを外せば聞きたくない音ばかりが耳に入るから、私はまた意味もなくヘッドフォンに手を伸ばしてしまう。
私には少し大きいヘッドフォンで耳を塞げば、流れ続けていたBGMが私を出迎えてくれる。再度ゲーミングチェアを鳴らして天を仰いだまま、私は答えの出ない悩み事に頭を痛めた。
漠然とした孤独感と焦燥感。それらが私を丁寧に撫ぜてくる。どこかがゾワッとして、気持ちが悪い。感情が意志を持って私に接してくること自体が違和感でしかなかった。それでも私は目を背けることができないまま、ただひたすらに天を仰ぎながら居心地の悪さに囲まれて身を縮めた。
「七湖入るよ〜」
私に声をかけると同時に部屋へ入り込んできた千花が徐に私のヘッドフォンを外してきた。 これはお決まりのルーティン。部屋に籠ったままの、世界を閉じきった私のヘッドフォンを取り上げるのが千花の役目だ。
「あれ、学校は?」
とっくに過ぎている登校時間を確認してから千花に尋ねれば千花はニッコリと笑ってコンビニの袋を掲げてきた。
「午後からで」
遮光カーテンの隙間から射し込む強い光とPCの明るい光しか知らない私には、千花の笑顔だって眩しく映る。
「……不良め」
「不登校が何言ってんだか」
お互い冗談を言い合って笑う、静かだが良い朝だった。いつの間にか外で鳴いていたカラスも静かになって、どこかへ飛んでいった。朝ごはんでも食べて家に帰ったのかな。
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