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私が不登校になったのは中一の頃。理由なんて何も無かった。いや、何も無かった、から学校へ行くのを辞めた。ただ面白くなかったんだ。その頃からゲーム配信を始めてインターネットの中の人たちと繋がることを覚えた。人との繋がりなんてそれだけで充分だった。のに。ここ最近ずっと考えている。このままで良いのか、何をどう変えたらいいのか。毎朝毎朝、配信の終わりに、照らされるPCの画面に問われ続ける。お前はこれでいいのか、って。もちろん千花には、聞けない。私と違って外の世界がある千花にこれ以上負担をかけたくなかった。
いつもと違う居心地の悪さを感じてか、喧嘩でもしているような空気感の中で千花がゆっくりと口を開いた。こういう時にいつも先に動くのも千花だった。
「なんか、空気悪くない?」
「ね」
「ねって……あ〜じゃあウチもう学校行こっかな」
「うん。お菓子、ありがと」
「今日の七湖、なんかイラつく」
そう言って千花はドアを閉めて帰っていった。取り繕わずに発される千花の言葉は嬉しい半面、強く強く刺さる。無駄にゲーミングチェアを回して天を見つめながら歯を食いしばった。千花の残していったお菓子に手をつけるも、そのしょっぱさにイライラだけが増していく。
今さら言えるだろうか。不登校かつ引きこもりであることを悩んでいると。今さら頼れるだろうか。常に隣にいてくれた人に。今さら、私は動けるだろうか。
冷たいフローリングに足を置き、ぺたぺたと音を作る。残していた水を飲み干し、布団へ潜り込む。遮光カーテンですら完全に防げない朝日がウザったくて、布団の奥へ潜り込んで背を丸めた。私はこんなふうに暗い世界で生きていたい。でも馬鹿じゃないからそれじゃダメだってもう分かってるんだ。けど、どうしたらいいのか分からない。身体がちっとも動きやしないんだ。こんな時に思い浮かぶのは千花の顔だった。また、そうやって千花に頼るんだ。そうやってそうやって自分一人じゃ何も出来ないままでいるつもりなんだろう、なあ?
問いかけても問いかけても返答は無い。当たり前だった。相手は自分なのだから。布団から出た足先を隠すようにさらに背を丸めて小さくなる。お腹の中に小さな惑星を抱えたような、そんな不思議な気持ちになっていく。悩みの種はあたたかく、鼓動と共に大きくなっていく。私はそれをどうしてか大切に抱えて育ててしまっている。こんなもの、布団の外に放り出してしまえばいいのに。なんでだろう。苦しさとあたたかさを同時に抱えたままの私は、ちょうど3時間目が始まる頃に夢の中へと意識を手放した。
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