恋はポテトと一緒に落ちてくる[改稿版]

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6年2組の教室に入ると、黒板に机列(きれつ)表が貼ってある。 あ、あの子の隣だ。 俺は、速る気持ちを抑えて、出来るだけいつも通りに話しかける。 「柚子ちゃん、同じクラスになるの初めてだよね? 2クラスしかないのに、珍しいよね」 俺はドキドキしながら、ちゃん付けで呼んでみる。 けれど、彼女から帰ってきた返事は、 「うん」 の一言だけ。 ま、ほとんど初対面みたいなものだしな。 仕方ない。 俺は、気を取り直して、持ってきた荷物を片付けていく。 翌日の学活でのこと。 学活の時間に、担任の神山 夕凪(こうやま ゆうな)先生が言った。 「6年2組では、20分休みは太陽の時間とします」 なんだ、それ? 「先生! それ、どういうことですか?」 昔から、静かに待つってことができない俺は即座に質問する。 「晴れた日は外へ出て、全員で学級遊びをします。遊ぶ内容は……、体育係さんに決めてもらおうかな」 いつも外で遊んでる俺にとっては、ふーんとしか思えないこと。 でも、ふと隣を見ると、明らかにどんよりとした空気を纏った柚子(ゆず)ちゃんがいた。 いつも外では見かけない柚子ちゃんは、きっと中で遊ぶ方が好きなんだ。 それに気づいた俺はまた質問をする。 「読書とか、お絵描きとかしたい子はどうするんですか?」 外で遊ぶメンバーは大体決まってる。 きっと柚子ちゃんみたいに教室にいたい子もたくさんいるはずだ。 「そういうのは、昼休みにしましょう。そうして、毎日、1回、クラスみんなで遊ぶの。先生も時間がある時は入るから、入れてね」 そう言って夕凪(ゆうな)先生は、にっこりと笑った。 よし、だったら、柚子(ゆず)ちゃんは俺が守ろう! 俺はそう心に決めた。
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