恋はポテトと一緒に落ちてくる[改稿版]

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翌日、早速、学級遊びが始まった。 初日の今日は、定番のドッジボール。 俺は早く行きたくて仕方ないのに、隣の柚子(ゆず)ちゃんは、のんびりしてる。 いつも授業が終わるとサッと片付けて、次の教科の用意をする優等生タイプなのに、今日に限ってわざとのんびり片付けてるみたい。 これ、行きたくないから、時間稼ぎしてる? ドッジボールが嫌いな女子が多いのは俺も知ってる。 だったら、俺が柚子(ゆず)を守る! 「柚子、行こ?」 あ、呼び捨てにしちゃった。 速る気持ちを抑えて優しく言ったつもりが、意識し過ぎた結果、呼び方を間違えた。 でも、柚子ちゃんは、気にする様子もなく答える。 「翔くん、先に行って。私、あとで行くから」 やっぱり時間稼ぎだ。 「柚子、ドッジ苦手だろ? 一緒にいないと守ってやれないから、一緒に来いよ」 俺は、黙ってこっそり守るつもりだったのに、思わずバラしてしまった。 こういう浅はかなとこ、直さなきゃなぁ。 反省しつつも、俺は柚子ちゃんの片付けを手伝うと、柚子ちゃんの手首を掴んで強引に歩き出した。 こうでもしないと、きっと外には出てこない。 そうして、俺は柚子の前で来るボールを全部取ってみせる。 1回、当たってしまったけど、すぐに外野から当て返して柚子のところに戻る。 俺はそうやって毎日柚子を守りながら遊んだ。 柚子が俺だけに聞こえるような小さな声で 「ありがと」 って言ってくれるのが、嬉しかった。 胸の中で何かが踊り出したんじゃないかって思えるくらい、うきうきそわそわした。 けれど、その楽しい日々も1年で終わってしまう。 柚子は地元の公立中学へ進学し、俺は私立中学に進学した。 卒業式の後、俺はこのまま柚子と離れるのが嫌で告白しよう心に決めた。 だけど、ずっと柚子が1人になるチャンスを伺ってるのに、柚子は常に誰かと一緒にいる。 いつもは1人で読書してるのに。 結局、俺は、告白できないまま、卒業してしまった。
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