恋はポテトと一緒に落ちてくる[改稿版]

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小さな女の子と手を繋いで振り返った彼女は、俺を見て、驚いたように、頭を下げた。 「あっ! あの、さっきは、慌てていて、すみませんでした。おけがはありませんでしたか?」 この声! 俺は、彼女をまじまじと見つめる。 「もしかして、柚子?」 頭を上げた彼女は、きょとんとした眼差しで首を(かし)げる。 「翔……くん?」 やっぱり、柚子だ! 「だあれ?」 柚子と手を繋いだ女の子が柚子を見上げて言った。 「うんとね、お友達」 柚子が優しい目で女の子に語りかける。 「柚子……結婚したんだ?」 ショック! 「え?」 「そうだよな。俺たち、もう27だし」 せっかく綺麗になった柚子と再会できたのに。 残念。 「いや……」 「あ、これ、柚子落としただろ?」 俺はかんざしを柚子に手渡しながら、話を続ける。 「柚子、全然変わってないな。あの頃のままだから、すぐ分かった」 「そう……かな?」 はにかんだようなかわいらしい笑顔は、俺の思い出の中にある柚子そのものだ。 あの頃、柚子かわいかったなぁ。 いや、今もだけど。 俺たちは、人波に流されないよう、小さな女の子を挟んで屋台と屋台の隙間に入り込む。 「俺さ、今だから言うけど、初恋って柚子だったんだ」 俺は、女の子に聞こえないよう、柚子の耳元でひそっと囁いた。 「え?」 柚子は驚いたように顔を上げる。 「俺さ、柚子と同じ班になりたくて、毎回班長に立候補してたんだ」 俺は幼い頃の初恋を懐かしく思い出す。 「班のメンバー決めの時、毎回手がかかる奴を引き受ける代わりに柚子をサポートにつけるように交渉してさ」 我ながら、必死だったなぁ。 「え? 偶然じゃなかったの?」 柚子が驚いた顔をする。 「偶然なわけないじゃん。 1年間、ずっと同じ班だぞ?」 多分、あの頃、クラス中が俺の気持ちに気付いてたのに、柚子だけが素直に偶然だと信じてたなんて。 「俺さ、卒業式の後、柚子に告白しようと思ってたのに、柚子のそばにずっと柚子の母ちゃんいてさ、結局、言えないまま卒業したんだよな。実は俺、卒業式の後、めっちゃ後悔したんだ」 なんで、卒業式の前に言っておかなかったんだろうって。 「う……そ……」 目を見開いて驚く柚子は、あの頃のままだ。
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