恋はポテトと一緒に落ちてくる[改稿版]

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「でも、柚子が幸せそうで良かった。今日、旦那は? どんな人?」 俺は、キョロキョロと周囲を見回すが、周りには誰もそれらしい人はいない。 「え、あの、それが……」 話すのが苦手な柚子が言葉を探してるのはすぐに分かった。 あの頃と全然変わってない。 「え、もしかして、訳あり?」 あ、悪いこと聞いたな。 「え、その、訳ありとかじゃなくて、旦那さんはいないから」 え? まじか!? 俺は焦った。 「あ、ごめん。まさか、シングルマザーだとは思わなくて」 そりゃ、言いづらいよな。 「じゃあ、柚子、また会えない? 俺、こんなかわいい柚子の子なら、子連れデートでも全然構わないよ」 柚子そっくりな柚子の子だし。 俺が1人でうんうんとうなずきながら話していると、柚子が口を開く。 「いや、そうじゃなくて……」 が、それを遮るようにかわいらしい声が聞こえた。 「ゆずたん、あんぱんま、かって」 女の子が、柚子の手を引いた。 か、かわいい! 「よし! お兄さんが買ってやる。 どれが欲しいんだ?」 俺はしゃがんで女の子の目線で尋ねる。 「まなたんね、あんぱんま、ほちいの。」 女の子は、綿菓子屋にぶら下がった人気キャラクターの袋を指差した。 「まな!! ごめん、大丈夫だから。ありがとう」 柚子は慌てて女の子の手を引く。 そして、柚子は、周りを見渡しながら聞いた。 「翔くんは、今日、ひとりなの?」 「ああ。さっきまで、タケといたんだけど、タケ、彼女に呼び出されて帰っちゃってさ。そうだ! 柚子、一緒に回ろうぜ」 これを逃したら、もう柚子には会えないかもしれない。 俺、普段は東京だし。 「あの、でも、真菜がいるから……」 あ、そうか。 子供の前で口説かれても迷惑だよな。 「大丈夫。友達としてでいいから。な? いいだろ?」 俺が柚子の目を覗き込むと、柚子は恥ずかしそうに伏し目がちにうなずく。 「う、うん」 相変わらず、柚子は推しに弱いなぁ。 「やった! まなちゃんだったよね。ピンクと水色、どっちがいい?」 俺は綿菓子屋の屋台にぶら下がった袋を指差して尋ねる。 「ピンク!」 俺は、屋台のおじさんに金を払って、ピンクの袋をまなちゃんに手渡した。
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