92人が本棚に入れています
本棚に追加
「そりゃ、姪だもん、似てるよ。ごめん。翔くん、一人で勘違いして、一人で納得してくから、口を挟めなくて。私、子供も旦那さんもいないよ?」
言い終えた柚子は、あの頃のようにくすくすと笑っている。
ってことは……
「柚子、独身?」
「うん」
はぁぁぁぁ……
俺は、盛大にため息を吐いた。
「俺、ついさっきまで、まなちゃんの父親になる決意してたんだけど」
脱力する俺の隣で柚子はあのかわいらしいはにかんだ笑顔を浮かべる。
「だって、翔くん、私の話、全然聞こうとしないから。ちょっとは私の話も聞いてくれればいいのに」
そう言って笑う柚子はやっぱりかわいくて……
「じゃあ、分かった。何の障害もないってことだよな?柚子、俺と付き合って。俺、今、東京に住んでるけど、柚子のために毎週、帰ってくるから。遠距離でも寂しい思いさせないから」
俺は、真剣に柚子に訴えた。
すると、
「え、翔くん、東京にいるの?」
と、柚子がまた驚いた顔をする。
「うん。でも、心配いらない。俺、柚子のためなら、何でもする。だから……」
そう言う俺に、小さな手が綿菓子を差し出した。
「はい! どうぞ」
か、かわいい……
「ありがとう」
俺は小さな手から綿菓子を受け取る。
「どういたまちて」
舌ったらずなその言い方がまたかわいい。
俺は、綿菓子を口に入れてから、また柚子に向き合う。
最初のコメントを投稿しよう!