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天使が落ちてきた。
水面に叩きつけられ、激しい水飛沫を上げて。
波間に浮かぶ岩の上で、月を眺めていた誰かが、その音にびっくりしてばしゃんと海に帰った。
悠々と魚影が泳ぐ暗い海のなか、差し込む白い月の光が、天使の雪のような瞼に水面の揺らぎを映している。
沈んでいく天使にするすると近づき、彼女はその細い身体を抱きしめた。
背中に回した指先に、わずかに羽根のような感触があった。鳥さんなのかしら、と彼女は首をかしげる。
彼女は少し離れた無人の島まで天使を運んだ。
砂浜に天使を横たえると、エメラルドの瞳で心配そうにじっと彼を見つめていた。
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