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第二ポイント 決定論と自由意志
つかみどころのないさやわかの間へようこそ。
あたしは管理人のクラウディア。狭いけど冷たい飲み物を用意したからゆっくりしていってね。外の景色は事情でお見せ出来ないけどキラキラした木漏れ日を楽しんで。えっ、残念ですって。
ええ、そうなんですよお客さん。すみませんね。
ここはオーシャンビューを満喫できるロビーになる予定だったんですよ。
ところが完成寸前に可能性の嵐が吹き荒れて無数の選択肢が生い茂ってしまったんです。
あたしも景色にあこがれてここに就職したんだけど、ま、これもありかな。
運命を受け入れるのか、って。あ、定番の質問ですね(にっこり)
お客さんは運命とか宿命を信じますか。
それとも予定は未定にして決定にあらずだと思いますか。
量子力学ではミクロの世界における粒子のふるまいを確率で論じます。
不確定性原理って奴ですね。
あれって世界線だの異世界だのラノベやアニメで好き放題に使われてますね。
マルチ…バースでしたっけ。お客さんの世界でも流行ってるでしょう。
でもあれ盛大に間違ってるんですね。
実は不確定性原理は粒子に万能を与える魔法でないんです。
観測者が知りえる情報に制限をかけるものなんです。
選択肢が増えたように見えた分だけ当たりくじが読みにくくなる。
だから未来は確率的にしかわからない。
じゃあ、運命なんてものはなく出会いの奇跡に感謝するしかないのかと言えば、そうでもありません。
決定論と自由意志は矛盾すると考えられていますが両立します。
実は運命にも自分の意思決定にもそれほどの支配力はないんですよ。
確率は粒子のふるまいを左右するけどそこから物理法則を生み出すことはできません。行動があり、そこから次々に派生していく状況をどうとらえるかがルールを決めることが運命なのです。
ですから、あたしは自由意志をこのように解釈します。
自由とは起こった出来事に責任を持つことだと。
つめたいお飲み物とデザートができました。ごゆっくりおくつろぎください。
お時間になりましたら次のブースへ責任をもってご案内いたします。
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