最終ポイント デッドレコニング

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ

最終ポイント デッドレコニング

警察に引き渡す前に一つ聞こうか。ある日、ある男性が道端で財布を拾いました。財布の中には多額の現金が入っていました。男性は、誰かが落としたのだろうと思い、警察に届けようと考えました。 しかし、男性は警察署に行く前に、その財布を開けて中を確認することにしました。そして、中から現金を取り出して、自分で使おうと考えたのです。 その時、男性の近くを通りかかった別の男性が、「警察に届けないのか?」と尋ねました。男性は、「警察に届けるつもりだが、現金を確認しているだけだ」と答えました。 すると、その男性は、「警察に引き渡す前に一つ聞こうか。もし、落とし主があなたのような人に財布を拾われたら、どう思うだろう?」と尋ねました。 男性はその言葉に気づき、自分がやろうとしていたことが誤りであることを悟りました。そして、そのまま警察署に行き、財布を届けました。 この話は、自分が正しいことをしていると思い込み、他人の立場や気持ちを考えることができなくなってしまうことを示しています。 この現象を「デッドレコニング」と言います。ナビゲーションシステムが不調に陥った場合に繰り出す奥の手です。GPSなど最後に自分を把握した地点を基準として遠方をのぞき込みます。怪物に挑むものは木乃伊取りが木乃伊にならぬよう注意せよ。深淵を覗く者は深淵に魅入られるのだ、とはニーチェの言葉です。デッドレコニングを試みる場合はジャイロセンサーなど慣性航法すなわち「今までの身の振り方」を元に原点へ立ち返るしかないのです。これは機械でも人間でも同じこと。 そして財布のエピソードに話を戻すと、こう言えます。 「拾った財布の中身は見ない事です」59a149a1-1558-4df9-8bdb-602fa1542b68
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!