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「おい聞いたか? 軍の奴ら、また負けたんだとさ」
「またか、今度はどれくらいやられたんだ?」
「全滅だとよ、噂じゃ新しく投入した兵器もてんで役に立たなかったんだと」
「へっ、ざまあねえな。あんだけ普段はいばり散らしてるくせに、いざって時はクソの役にも立ちゃしねえのかよ」
窓の外から聞こえる雑音、それは家の中にいる青年の耳には届かなかった。
青年は椅子に座り、パラパラと色褪せたノートを眺めていた。
人なのか、それとも花なのか、なんだかよく分からない絵が描かれたノート。
それを見るのが、彼の毎日の日課だった。
「おーい! 真一! 起きてるかー!」
元気のいい声と共に、ドアが強く叩かれた。
青年は相変わらずだなという風に小さく笑い、ノートをしまい、ドアを開ける。
「おはよう、相変わらず朝から元気だな」
「まーな、朝にテンション上げとかねえと夜まで持たねえからな」
真一の家を訪ねてきたのは、彼の同僚である春野和弘だ。
和弘はいつも後ろ髪に寝癖がついているのが特徴の、元気でよく笑う感じの良い青年だ。
「もう出れるか?」
「大丈夫、すぐ行くよ」
真一は荷物を持つと、すぐに家を出た。
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