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男は面倒くさそうに頭を掻き、はぁと大きく息を吐いた。
「うるせえなぁ……だから何だってんだよ」
「なに?」
「こっちは命かけてお前らを守ってやってんだよ、少し床に転げたぐらいでギャーギャー騒ぐんじゃねえよ」
「てめえ!」
和弘が軍人の胸倉に掴みかかった次の瞬間、男は彼を殴り飛ばした。
吹き飛ばされた和弘は、近くにあったゴミ箱にぶつかり中身をまき散らした。
「くそ……!」
和弘は唇を切ったらしく、口の端から血が流れている。
「だからお前ら軍人は嫌いなんだ! 横暴で、自分勝手で! 偉いからってやっていい事と悪い事があるだろうが!」
「何もできないガキが偉そうな口をきくな! お前はあいつらと戦ってねえからそんな口がきけるんだ、軍に入ってあいつらの姿を見れば嫌でも分かる。俺たちがどれだけ命かけてるかってな!」
「知るか! 謝れ、あの人に謝れよ!」
男はその言葉で頂点を迎えたらしい、胸元から拳銃を取り出し和弘に向けた。
「クソガキが……ここで殺されてえか!」
「おい……それ以上はやめておけ。子供相手にそこまですることはないだろう」
「うるせえ!」
背の高い軍人の言葉を一蹴し、男は和弘を睨みつけた。
「土下座して謝れば許してやる、しなければ……分かるよな?」
「クソ野郎が……」
和弘は仮にここで撃たれたとしても、頭を下げるつもりはなかった。
そう決めていた彼の覚悟は、隣で土下座した友人の姿によって揺らいだ。
「真一……!?」
「すいませんでした」
「誰だお前?」
「こいつの友人です、こいつは良い奴ですが感情的になる事が多いんです。友人として、同じ職場の人間として代わって謝罪します。どうかこれで許してください」
「へえ……ずいぶん物分かりの良い友達がいるじゃねえか。それでお前はどうすんだ? 友達に頭下げさせて、自分は意地を通すのか?」
「ぐっ……」
和弘は奥歯が砕けるかと思うほど歯を食いしばりながら、真一と並んで頭を下げた。
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