プロローグ

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プロローグ

「え、今なんて言った?」 言っている意味がわからなくて、私は達也の方を向く。 達也はこっちを見ない。 最初、自分の耳がおかしくなったのかと思った。 もう一度尋ねようとした折、雑誌からようやく面を上げた達也はいつものへらりとした顔で、言った。 「そもそも俺らって付き合ってなかったじゃん? ちょっと仲のいい友達って感じでさ。俺もそろそろ彼女の為に身を固めようっていうの? だからさ、悪いんだけど出てってくれない? このマンション」 ◆ ◆ ◆ ない。 あり得ない。 寒空の下、キャリーケースを引きながら私は今、涙目だ。 元彼にマンションを追い出されてから3日。 ビジネスホテル代も馬鹿にならなくて、私は焦っていた。 早く新しい家を見つけなきゃいけない。 焦れば焦るほど、新居探しは混迷を極めていって……。 「……もう、何なの」 付き合って2年。
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