プロローグ

4/6
前へ
/76ページ
次へ
フローリングなのはOK。窓が小さ過ぎないのも合格点。 問題は……。 「ベランダ、見てもいいですか?」 「ああ、女性は防犯上気になりますよね。どうぞ、お開けします」 ベランダに出ると乾いた風が首筋を撫でた。 冬の匂いを感じながら、ベランダから階下を見下ろす。 ドド、というエンジン音が止まるのと、私が視線を下げたタイミングは一緒だった。 駐輪場にバイクをとめたその男性はヘルメットを取ると頭を振り、それからおもむろにこちらを見上げた。 整った顔立ち、というのが遠目でも分かる。 身長も高い。 シンプルで飾り気のない白ニットとジーンズ、ライダースジャケットがしっくり似合っている。 こなれた感じの雰囲気の人だな、と思い、目が合ったのでぺこりと頭を下げる。 向こうも、小さく下げ返してくれた。 目の保養にはなるけれど、じっと見続けるのもいかがなものかと思って私は家の内見に戻る。
/76ページ

最初のコメントを投稿しよう!

59人が本棚に入れています
本棚に追加