お隣さんと謎解きを～イケメンパティシエには何か秘密があるようです～

新たな事実の判明

「聞いたって……何を？」

不思議そうに振り返った陽子先輩は、首を捻った後、私へ『何の事か分かる？』と視線を向ける。

フルフル首を横に振る私を見て、先輩はバインダーをデスクに置いて東さんに向き直った。

「他部署の人がまた領収書失くしたとか？」

「違います。総務部の事です」

「総務部？」

他の部署の人はあまり領収書の重要性を理解していないのか、「必ず提出してください」と毎度お願いしているのに、紛失したり誤ってゴミとして捨ててしまったりする人は未だに多い。

その都度、「領収書ないけどどうにかしてもらえませんか」と泣きついてくる率が圧倒的に高いのが営業部で、陽子先輩の言う『他部署』とはほぼ、そこだ。

ここで東さんの口から営業部ではなく総務部が出てきたのが陽子先輩も意外だったんだろう。

「総務部で何かトラブル？」

総務部は私達経理部と隣同士だから、どちらかに何かあれば噂は自然と耳に入る。

東さんは総務部に仲のいい同期の子がいるから、このフロアにおいてはうちの誰より情報通だ。