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「……っ!」
思い切り、泣ける。
アパートのドアを開けるまで我慢できなかった涙が頬を伝う。
泣くもんか。
そう思っていたのに。
ズタズタのプライド。狭い玄関にずるずると崩れ落ちながら、痛感した。
本当に、達也に大事にされてなかったんだ、私って。
かえのきく、スペアの様に思われていたに違いない。
「可哀そう……」
自分で発した言葉が、自分の心をひどく抉る。
でも、言わずにはいられなかった。
向こうは遊びでも、私は本気だった。真剣に、達也の事を好きだった。
「本当、見る目なさすぎでしょ……」
陽子先輩は長く付き合っている素敵な彼氏がいるらしい。
その彼の事を話すときの先輩の表情は本当に柔らかくて、きっと、とても愛されているんだなぁと羨ましくなる。
先輩みたいに、ちゃんと自分の事を見てくれる人を、一番に考えてくれる人をどうして好きにならなかったんだろう。
初めてつきあって、色んな世界を知った気がした。
そう感じていたのは、私だけだったんだな。
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