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カチと缶と缶が小さくぶつかる音がして、私はゆるりと立ち上がる。
黒の地味なパンプスを揃える事もせず脱ぎ捨てて、上着をベッドに放る。
指先に引っかけたコンビニのビニール袋の中から取り出した缶酎ハイはまだ冷えていて、まだ取り込んでいないベランダの洗濯物を見遣って、どっと疲労が襲ってくるのを感じながら、私はプルタブに指をかけた。
鍵を開けて薄い窓をスライドさせると、冬の夜風があっという間に全身を包む。
涼しいを通り越して、寒い。
終わった恋にのぼせた頭を冷やすには十分な冷たさだ。
ごく、ごく、ごく。一気に3口。
普段、アルコールの類はめったに口にしないけれど、今日初めて、皆がこぞって言うあのセリフの意味が分かった。
飲まなきゃ、やってられない。
カラカラと隣の部屋の窓が引かれる音がして、私は一瞬、ぎくりとする。
けれど、次の瞬間には、もうどうでもよくなって干しっぱなしのタオルと共に、隣人を出迎えた。
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