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「澄ちゃん?」
タバコ片手に現れた森宮さんは私の姿を認めると、怪訝な表情を浮かべる。
「え、何しとんの。こんな寒いとこで飲まんでもええやん」
「飲みたい気分なんですよう」
似合わない甘ったれた声で投げやりに言うと、森宮さんは喫煙を諦めて、こちらへと近づいてきた。
「あ、酎ハイか。いや、最近のは意外と度数あるよな。澄ちゃんて、強い方なん?」
「3年に1回くらいしか飲まないです」
「……その3年に1回の貴重な飲酒日が今日?」
なんか、あった? さり気なく森宮さんが聞いてくるから悪いと思う。
だって、弱ってる時にそんな優しい声を出されたら、たまったもんじゃない。
「あと、1本あるんですよー」
「うん?」
「酎ハイ。森宮さん、一緒に飲みましょうよ。こんな、最悪な日はもう飲まなきゃ駄目ですよ」
森宮さんが「澄ちゃん、めっちゃ酒、弱いね?」と困った顔で、手すりに組んだ腕をのせる。
「アルコール得意じゃない子がほいほい男部屋に呼んだらあかんよ。危ないし」
「ほいほい呼んでないです」
「澄ちゃん」
「森宮さんはお隣さんだからいいんですー!!」
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