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「でも……」
「聞いてください、森宮さん。私ってば本当についてなくてー。残念な女なんですよう」
「このままにしとったら、澄ちゃんベランダで泥酔しそうやね……」
呆れ顔の森宮さんは、「ほんなら」手すりから手を放して、部屋の中へ帰っていく。
酔っぱらいの戯言に付き合う程、森宮さんも暇じゃないだろう。
「ほんなら、かぁ……」
彼の姿が見えなくなると、わざとらしいテンションで会話していたのが空しくなってきて、芽生えてきそうな心細さを押しつぶす為に、残りの液体を一気に流し込んだ。
ぼうっと、頭が霞がかったような、足元がふわふわするような感覚に陥りながら、これが『酔う』ってことかなあ、なんてぼんやり思ってみる。
早く今日が終わればいいのに。
こんなに達也に傷つけられた1日が一刻も早く去って行けばいいのに。
でも、今日が終わると来るのは明日で。
社会人をしている限り、出社しなけばたちまち生活は立ち行かなくなる。
「もう、嫌だな」
独り言ちて、落ちてくる瞼が抗うのを止めそうになった時、インターフォンが、鳴った。
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