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「なんで、あんな人の事、好きになったんだろう。なんですぐに、遊ばれてることに気づけなかったんだろう。そう思ったら、色々馬鹿らしくなっちゃって。大して好きではなかった自分の事が、心底嫌いになっちゃいました……」
隣人というだけで、こんな愚痴めいた事を聞かされてきっと森宮さんは困っている。
恥ずかしい。悔しい。みっともない。
色々な感情がぐるぐるして、結局結論なんか出るわけなくて、安易にお酒に頼って逃げる。
少しは、森宮さんと仲良くなれたと思ったのにな。
これで、全部台無しだ。
たかが失恋くらいで、こんなに人に迷惑をかけるなんて。
「澄ちゃん、よぉ聞き」
これ以上、ひどい顔を見られたくなかった。
同時に、森宮さんの目に浮かぶ軽蔑を見たくなかった。
面を伏せたままの私に、彼が言葉を紡ぐ。
「なんがあってもな、澄ちゃん。どんなに辛いなぁ思っても自分の事嫌いとか言っちゃあかんよ」
「……でも、森宮さん、私」
「澄ちゃんはええ子やん。ミネストローネ作れる、すごい子やん。物々交換しよって俺の持ってきたケーキ、半分こしてくれるような優しい子やろ? ちゃう?」
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