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「一緒に食事した時、少し話したやん。そん時、思った。澄ちゃん、なんやしんどい思いしたんやろな。だからこんなに人に優しんかな。けど、ちょっと心配やなって」
「……心配?」
「思いつめて、感情の矛先を自分自身に向けてしまいそうなとこあるなって」
森宮さんがベッドに私を腰かけさせる。
自分は床に腰を下ろして、私の両手を包んだまま、にっこり微笑んだ。
「偉いな。頑張ったな、澄ちゃん」
落ち着いた低音が、凍り付いた気持ちを溶かす。
―偉いな。頑張ったな、澄ちゃん。
さっきとは違う意味で、涙がこぼれた。
それでようやく、私は気づいた。
ずっと欲しかった言葉はそれだと。
誰かに言ってもらいたくて、自分を殺して無視していた気持ち。
目の前の森宮さんが、私の隣人がどうしてそんな魔法の呪文を知ってるんだろう。
やっぱり森宮さんはすごいと思う。
私より年上だから? 場数を踏んでいるから? 女慣れしてて扱いが上手いから?
違う。
根っこが、心の中の深い部分が柔らかくて優しいんだ、この人。
だから、人に寄り添えるんだ。
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