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歯磨きをしに洗面所に行く。
うがいをする時、髪の毛が濡れない様にシュシュで髪を結っていて違和感を覚えた。
「あれ?」
左の首筋に、噛み跡の様なものを見つけたからだ。
「これ……」
指先でなぞる。
森宮さんの言葉が確かなら昨日私はそのまま寝てしまって、彼が私の肩に顔を埋めたのも記憶違いという事になる。
だけどそれなら、これはなんだろう。
鏡に身体を近づけてよく見てみる。
酔っていた自分の記憶より、素面の森宮さんの言葉の方が正しい気がする。
そう思いつつも何か引っ掛かるものを感じて、鏡に映る自分を見つめていたらベッドサイドの目覚まし時計がピピピと電子音を発した。
それで慌てて、今日が平日なんだと思い出してクローゼットから戦闘服を引っ張り出す。
戦闘服。そうだ。私は社会人、今日も戦わなければならない。
メイクも、ブローもしなくてはいけないけれど、その前に軽くシャワーも浴びておきたい。
いつもだったら前の晩に済ませておくことを昨夜は何もせず寝てしまったから、今日の朝は余計にバタバタだ。
まっさらになった顔に下地、ファンデーションを重ねて、眉を引く。
リップをつけて出来上がった今日の私が、「よし!」と呟き、立ち上がった。
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