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曲がりなりにも営業部で働いているくらいだから、その辺りの事情については上手くごまかしているのだと思っていたけれど。
もし、達也が自分に都合のいい様に櫻井さんに私との関係を話していたら、あの侮蔑の色は理解できる。
騙されていたのはこっちなのに、どうしてこんなに気を遣わなくてはならないんだろう。
せめて、櫻井さんと勤務フロアが違えばまだ息がつけたかもしれないのに。
「経理部、誰もいなくてびっくりしたでしょう。ちょっとこっちの子達に呼ばれちゃってね」
陽子先輩が声をひそめて事情を説明してくれる。
「見てくださいよ。可愛いですよねー。このミモザ柄のマグカップ!」
「マグカップ?」
総務部の吉松さんが、櫻井さんの手中にあるマグカップを指して羨ましそうな声を出した。
「私の彼氏なんて記念日だろうがなんだろうが何もくれないですよ。飯干さん、マメですよね」
「雑貨屋さんで見つけてくれてプレゼントとしてくれたんです」
「可愛い柄ね」
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