お隣さんと観葉植物

1/10
前へ
/76ページ
次へ

お隣さんと観葉植物

段ボールに貼られたガムテープをペリッと剥いでいく。 数はそんなに多くない。 ほぼ、身1つで飛び出してきたようなものだからだ。 家具家電はほとんどがあのマンションに置いてきたし、達也と折半して購入したとはいえ、権利を主張する気力がなかった。 だって、達也にとって私は謎の同居人でしかなかったのだから。 ともあれ、無事不動産会社との契約手続きは完了し、私は晴れて新居を借りる事ができた。 前とは比べものにならないくらいのボロアパートだけど。 冬の空気は相変わらず冷たいけれど、晴れていて幾分動きやすい。 「よし!」 絶好の引っ越し日和だ。 椅子を使って背伸びしながらどうにか部屋のカーテンを取り付ける。 色はラベンダー。 甘すぎず、クールすぎず、大好きな色だ。 新しく買ったラックにお皿やマグカップを収納したところで、ひと息入れることにした。 小鍋でお湯を沸かすのが面倒で、マグカップにミネラルウォーターを注ぎレンジにセットする。 1分50秒ほど温めて、インスタントコーヒーの粉をスプーンで入れてかき混ぜた。 そのままベランダに通じる窓を開け、サンダルを履く。 ちょこんと置かれた観葉植物。
/76ページ

最初のコメントを投稿しよう!

59人が本棚に入れています
本棚に追加