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「そこの雑貨屋さんのオリジナルデザインで限定品なんです。今、私カフェイン控えててコーヒー飲めないから代わりにルイボスティーのパックを家から持ってきて飲んでるんですけど、その事を話したら使いなよって」
「……」
櫻井さんの視線がちらりとこちらへ向く。
彼女がコーヒーを控えている理由は1つしかない。
「いいなぁ。こういう風に身体を気遣ってくれる彼氏っていいですよね。……って彼氏じゃなくて婚約者かぁ。営業部のエースはやる事違いますね」
「本当に飯干さん優しくて、助かってます」
幸せそうに櫻井さんが微笑む。
「飯干さんと結婚するのが櫻井さんなら納得だよね。今、一緒に住んでるの?」
「はい。私の実家に挨拶しに来てくれて、ちょっと気が早いかもだけど彼のマンションで暮らしてます」
「順調だね」
「寂しくなるなー。櫻井さん、いなくなると」
総務部の深山くんの言葉に皆が頷く。
ずきん、ずきんと胸が痛む。
私が大事にしていたものを、思い出を、針でつつかれている気持ちがして居心地が悪かった。
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