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プロローグ『あれ?』
それは、暑い暑い日のことだった。
40度近い太陽の光線により、とあるうじ虫はへばっておりました。
「ンハァァァ、死にたくないよぉ! まだやりたいこといっぱいあったのにぃ! んはっ、あは、んああああああん!」
気持ち悪い叫び声を上げながら、うぞうぞと動いていました。そこで、人間の子供がやってきて、うじ虫を摘み上げました。
「んえっ、あはっ、俺、ここで死ぬっ、うあああああ!」
プチッ。
うじ虫の生涯は呆気なく終わりました。
それはもう、とてもとても、見ていられないくらいの悲惨でした。
「ままー、虫ー!」
「きゃー! やめてー!」
うじ虫は人間を恨みました。
うじ虫が気がつくと、椅子に座っていました。
ここはどこかわかっておりませんでした。
窓から差し込む月の明かりが、うじ虫だった者を映し出します。
周りには、人間に似たような女性がいました。だけど、決定的に違うのは、角が生えていたり、虫の羽を生やしたりしていました。
「ここは、俺は死んだんじゃ」
といっていると、周りにいた女性は、うじ虫の顔を触っていました。
「ベルゼブブ様、大丈夫ですか? お顔色が悪いようですが」
「え、あ、誰だ?」
「忘れましたの? あなた様の妻のアーデンですわ」
「あ、アーデン?」
うじ虫は訳がわからなくて、困惑していました。
「俺のようなうじ虫に妻がいるわけが」
このうじ虫は、なぜか皮肉染みていました。
「鏡を見てください」
うじ虫は、鏡に映った自分に驚きが隠せなかったようでした。
触覚が生え、ハエの翼を持ち、イケメンの部類に入るような人間に近い、イケメンなハエでした。
「これが、俺」
まじまじと眺めていると、執事がやってきて、大声を出しました。
「勇者が来ました!」
「お、俺なんかが勝てる訳ないだろ! 勇者ってなんだ!」
「ベルゼブブ様! 混乱していないで、対策を!」
銃弾の音が響き渡った。
執事は倒れ伏してしまった。
うじ虫ことベルゼブブは目を見開いて固まった。勇者は、あくどい顔をしており、魔法使いの女の肩を抱きながら、拳銃を片手にしていた。後ろにはまだ女がいました。
「おいおい、ベルゼブブ様よぉ! 執事が殺されて黙って見てていいのかあ!?」
下品な笑い声。
ベルゼブブは過去のことを思い出してました。
小さい頃の仲間が殺されていくのを。怯えて暮らしていたことを、ベルゼブブは立ち上がって、勇者の胸ぐらを掴み、殴り飛ばした。
「勇者様!」
女性陣達が勇者を心配している。その隙に手を上に上げて、空中やら隙間から虫を一気に引き寄せた。
全部ハエだ。
ハエが勇者パーティーの体に入り込み、穴という穴に入り込んでいった。叫び声を上げているが、口に入ってくる虫達に抵抗ができなかった。
「アーデン、執事を治療しろ。俺が、こいつらの相手をする」
うじだった虫は、ベルゼブブになって魔王になりました。
そんな魔王は怒って勇者パーティーの体に虫を次から次へと入らせていきました。
しばらく経つと、勇者のパーティーは虫に食われて死んでしまいました。
怒りを落ち着かせると、うじ虫だったベルゼブブは我に返りました。
「あれ?」
魔王城は拍手喝采でした。
ベルゼブブは、何がなんだかわかっていませんでした。
「俺勝ったの?」
そんな魔王の話です。
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