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「いやまぁ、僕は別にいいんだよ。潤は聞く耳持たないってわけじゃないしさ、きちんと話せば納得してくれるだろ? ただ僕は、潤が余計なことで苦しむのが嫌なんだ」
陽一郎の真摯な言葉に、彼はようやく頬を緩める。
「ありがとう。そうだよね、二人のことなんだ。……俺、そんなこともわかってなかった。逆に陽一郎さんに、『それが潤の幸せだから』なんて一方的に押し付けられたらやっぱイヤだもんなぁ。『勝手に決めないでよ!』って思う、絶対」
「そういうこと。何よりさ、今の時代は結婚しない奴なんて普通にいるだろ? 『したくない』と『したいけどできない』は同じじゃないけど。それでも、昔みたいに社会が『結婚してこそ一人前』一辺倒ではなくなって来てると思うよ」
「あー、それは感じる。って言っても昔のことは知らないんだけどさ、職場で独身の人凄い多いもん。二十代で結婚してる人なんていたかなってくらい」
「ま、僕たちみたいなのには少しは生きやすい時代かもな、少しはな」
──男同士には、男女みたいに『結婚』っていう明確なゴールはないけど、それでも潤とは他のかたちで何とかしたい、よな。
大切な恋人との未来の形を思い描きながら、陽一郎は諸々タイミングを見計らっていた。
~『木漏れ日』END~
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