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 潤が恵太と出会ったのは高校三年生の春だった。  どうしても今通っているこの大学に入りたかった潤は、親に頼んで大学受験に向けて家庭教師をつけてもらったのだ。  家庭教師仲介センターを通して、『桂銘(けいめい)大学の学生さんで、大学受験の指導経験がある人を。もし可能なら合格実績のある方なら申し分ない』という要望を出した。  それに応えてやって来たのが当時経済学部の三年生であった彼だった。 「いやいや、先生はやめてよ。俺まだ学生だし、君とたいして年も変わらないしさ。もっとフランクに『けーちゃん』とか『けーたくん』でいいよ」  初めて家庭教師として潤の自宅を訪れた際、リビングで母親を交えて挨拶に続き簡単に方針などを確認したあと。  自室へ移動して、改めて「藤沢(ふじさわ)先生、よろしくお願いします」と頭を下げた潤への、それが彼の返事だった。  ……もしかして少し変わった人、だったりするのだろうか、と内心動揺する。 「それは、さすがに……。あの、だったら『恵太さん』とかでいいですか?」 「あ、いいよ~」  とりあえず、いくら何でもその呼び方はできない、と妥協案を出した潤に、恵太はやはり気軽に頷いた。  平均程度の潤からすれば、見上げるほど大柄な年上の男性。  笑顔が優しく見るからに穏やかで落ち着いた雰囲気の彼は、実際には明るくてお喋り好きな気のいい人だった。
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